PICK UP ACTRESS 吉本実憂
PHOTO=城方雅孝 HAIR&MAKE=小嶋絵美(VANITES) INTERVIEW=斉藤貴志
衣装協力=ジョイフル恵利 着付=きものさろん花子
インパクトある役を続けて飛躍
新年には初めての舞台にも挑戦
――昨年は「クズの本懐」や「さくらの親子丼」でインパクトのある役が続きました。
「思い返すと、昔から王道ではない役をやってきた感じはします。『罪の余白』で悪女をやったときも『珍しい』と言われましたし、自分でも変わった役はすごく好きです」。
――「全日本国民的美少女コンテスト」グランプリ出身で王道を行きそうな吉本さんですが、自分からそうではないところに行きたがる部分もあるんですか?
「もちろん正統派の役もやってますけど、『クズの本懐』もオーディションを受けさせてもらいましたし、『さくらの親子丼』の家族のことで苦しんでいる女の子の役は、ずーっと演じたかったんです」。
――なぜですか?
「そういう子は世の中にたくさんいるじゃないですか。だから、家族や友だちの前ではニコニコ笑っていても、夜一人で泣いているような女の子たちが、ちょっとでも明るくなるきっかけになる作品に出たかったんです。そこは目標のひとつにしていたので、『さくらの親子丼』のお話が来たときはすごくうれしくて、演じたあざみの髪も自分でこだわりました」。
――毛先だけ金髪に染めているのは、吉本さんのアイデアだったそうですね。
「家出をしている女の子だから、全部が金髪だときれいに手入れできないだろうと思って……。だったら、黒髪にも金髪にも取れるように毛先だけ……ということにしました」。
――あざみが怒るときは、だた頭にきてるというより、親の愛情を知らずに生きてきた背景が感じられました。
「だったら良かったです。役を演じるのは、ちょっとの期間でもその人の人生を歩むことなので、役のバックグラウンドを自分で細かく作ることは決めていて、ずーっと続けています。でないと、役を生きることができないので。あざみのときも、1話の台本しか上がってない時点では背景はざっくりとしか出てませんけど、自分で想像して書いてみました。実際の物語と結果的に違っても、そういう作業をすることによって役に深みが出るのと思うので、必ずやっています」。
――あざみに関しては、どんなバックグラウンドを考えたんですか?
「『母親はどんな人だったのか、父親はどうだったのか、彼氏は今までいたのか、友だちはどれくらいいるのか、人を信用しているのか……』などを考えました。あとクセも考えて、声をちょっと低くしたり、ポケットに手を突っ込んだりもしました」。
――浅川梨奈さんが演じたシングルマザーがブランコで遊びたがる子どもを引っ張っていこうとして、あざみが激怒したシーンでは、そういう彼女のバックグラウンドが自然に出ていた感じがしました。
「自分が赤ちゃんの頃に母親に殺されかけて、母親とか子どもということにすごく敏感なんだと思います。『なんでだよ!』という気持ちが、相手に対しても自分の中にもあったんでしょうね。でも私、浅川梨奈ちゃんがすごく好きになっちゃって(笑)。かわいいし、おっとりしているようでハキハキしているところに惹かれました。撮影が終わって『バイバーイ』ってなってからも、スパガ(SUPER☆GiRLS)の動画を観てました」。
――吉本さんは普段は、ああいうふうに怒ったり感情を高ぶらせることはあるんですか?
「冷静に怒ります(笑)。怒ると黙るんですよ。わかりにくい怒り方をします。怒鳴ったりはしなくて、見た目には出さず、言いたいことは言うかもしれません」。
――かえって怖いかも(笑)。
「プライベートでも、喜怒哀楽の感情はいろいろ出したほうがいいと思うんですけどね」。
――「さくらの親子丼」の劇中では、あざみはさくらさんと暮らす中で少しずつ心を開いていきましたが、そういう変化の付け方も意識しました?
「さくらさんのおかげで、あざみは一歩と言わず何歩も踏み出せたと思いますけど、変化は現場で自然に作ってもらえた感じがします。(さくら役の)真矢(ミキ)さんに助けられて、私はあざみとして、あの場で生きられました。最終回で、あざみのお母さんがさくらさんに『許してください』と謝ったところで、真矢さんが急に私の方を向いて、うなずいたんですね。今まで、そんなことしなかったのに。それで気持ちがハーッ……となりました。そういうことが日々ありました」。
役になり切るため暖房を断って
すごく寒くて後悔しました(笑)
――「クズの本懐」の花火は、想っている相手が別々にいる麦と「お互いの身体的な欲求はどんなときでも受け入れる」といった条件を交わして付き合って、過激なシーンもありましたが、自分の殻を破る感覚はありました?
「それも必要だったのかな? でも、現場でキャストがすごく仲良かったんですよ。麦役の桜田通くんとも、ドラマの中ではバチバチしていた茜先生役の逢沢りなちゃんとも。だから、安心して身を委ねられる部分もありました」。
――観ているだけで心が痛くなるドラマでしたが、花火を演じていて辛くなりませんでした?
「重いシーンのときは苦しかったです。でも、基本的には明るくやってました。初めてのドラマ主演で緊張して『主役は現場でどうしていたらいいんだろう?』と思いつつ、撮ってないときはキャッキャ言ってました」。
――花火と麦がそれぞれ告白することを決めて、フラれる前提で夜8時にまた待ち合わせをしていたら、花火は失恋したうえに麦も来なかった……という話もありました。
「撮ったのが冬で、外で麦を待っているシーンのとき、スタッフさんがストーブを近くに持ってきてくれたんですけど、花火の気持ちになりたかったから『大丈夫です』と言ったんですね。それをすっごい後悔しました(笑)。めちゃめちゃ寒かったんですよ! でも、震える演技は自然にできました」。
――女優魂ですね。
「撮っていたのは30分くらいでしたけど、花火は2時間くらい待っていたので、この4倍の寒さとなると……。『麦は許せない!』という気持ちに吉本実憂としてはなりました(笑)」。
――花火の感情が理解しにくいことはありませんでした?
「あまりなかったです。寂しいから他の人に寄り添ったり、甘えるのは理解できます」。
――「茜先生に向けられた好意のすべてを搾取する」と攻撃的になったところも?
「あそこは“恨む”みたいな言葉がピッタリだったと思います。私も近い気持ちになったことは、なくもないので。恋愛のことではないですけどね」。
――最後に結局、花火と麦は別れました。
「地上波では花火のモノローグが入ってましたけど、FOD版では麦目線でサヨナラしたところを見ているんです。こう言ったら花火としてはアレですけど、私はそっちの気持ちのほうがよくわかって、キュンときました。だから、FODでも観てほしいです」。
――考えたら1年ほど前、この役で原作マンガに合わせるのをきっかけに、吉本さんは長かった髪を切ったんですよね。
「はい。小さい頃と同じ髪形になって、自分に素直になれました。20歳を控えて大人になろうとしすぎていたのが、『自然体でいいんだ。頼ったり甘えてもいいんだ』って、自分の素を出せました」。
――年が明けて初舞台となる「三文オペラ」も控えています。舞台は前からやりたいと?
「一度はやってみたかったです。1カ月半くらい稽古をして作り上げて、共演者みんなと会えるのは、すごく特殊だなと思いました」。
――稽古でも映像での芝居との違いは感じます?
「もう全然違います! 発声の仕方も違うし、ひとつのシーンに、一場という言い方をしますけど、1日かけて稽古したりもするじゃないですか。映像ではそこまでかけたことはなくて……。何回も何回も繰り返すので、叫んだりするシーンだと頭がクラクラしてきます(笑)。それで鍛えられたりはしますね」。
――そういう感じで仕事が忙しい中でも、20歳になって生活が大人モードになってきた面はありますか?
「1人で電器屋さんに家電を見にいくことは増えました(笑)。買わなくても、トースターとか掃除機とか見るのが好きです」。
――洋服のウィンドウショッピングはよくありますが、家電でやっているんですか?
「洋服も好きですけど、電化製品を見て回るのは楽しいんですよね。人間と同じで、商品に1コ1コ違う機能が付いているんです。こっちはグラタンを作れるけど、こっちはパンだけとか。そういうのがいっぱいあって、見るだけで面白いです」。
――なるほど。2018年に何か個人的に目論んでいることはあります?
「できれば髪形をいっぱい変えたいです」。
――また伸ばすんですか?
「いえ、ベリーショートにしたいんです。『GISELe』という雑誌のモデルのAlisaさんが大好きで、その方がベリーショートの金髪なんです。私もそうなりたいと思ってます」。
――仕事の関係もあるでしょうから、実現するかわからないとしても、吉本さんがそうしたら、また衝撃的ですね。新しい自分を見つけたい感覚もあるんですか?
「そうですね。意志を持って選択していきたいです。慎重に、丁寧に、大胆に。楽しく生きていきたいです」。
吉本実憂(よしもと・みゆ)
生年月日:1996年12月28日(21歳)
出身地:福岡県
血液型:AB型
【CHECK IT】
2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを受賞。2014年7月にドラマ「獣医さん、事件ですよ」(日本テレビ系)で女優デビュー。これまでの主な出演作は映画「ゆめはるか」、「罪の余白」、「HiGH&LOW THE RED RAIN」、ドラマ「アイムホーム」(テレビ朝日系)、「表参道高校合唱部!」(TBS系)、「とと姉ちゃん」(NHK)など。2017年にはドラマ「クズの本懐」(フジテレビ)で主演。ドラマ「さくらの親子丼」(東海テレビ・フジテレビ系)、映画「紅い襷~富岡製糸場物語~」などに出演した。初めての舞台「三文オペラ」に出演。2018年1月23日(火)~2月4日(日)KAAT神奈川芸術劇場、2月10日(土)札幌市教育文化会館。
詳しい情報は公式HP